上流域でも、地域づくりを通して森林再生に取り組む人たちがいる。節の少なさが自慢の「西川材」を送り続けてきた飯能市。消費地と生産地が同居し、名栗村と合併すれば森林が新市の約75%を占める同市にとって、林業振興は頭の痛い問題。そんな中、商店街で、山間部で、二つの民間団体がユニークな活動を続けている。
「木馬をつくる会」。不振にあえぐ商店街と林業を結びつけ盛り上げようと、商店街で酒屋を営む井上七恵さん(55)と一級建築士浅野正敏さん(53)を中心に、五人が集まり昨年四月に旗揚げした。これまでに西川材の間伐材で木馬を七台制作、銀行や商店の店頭に飾った。素朴でかわいい姿に、道行く人の顔も思わずほころぶ。「木馬の頭をなでていく会社員を見たことがある。癒やし効果があるんですかね」と井上さんは笑う。
長引く不況と大型店の進出でシャッターを下ろす店が後を絶たない商店街と、安い輸入材に押され勝負できなくなって久しい西川林業。浅野さんは「商店主も林業家も、その日を生きるので精いっぱい。でも誰かが長い目で見た活動をしなければ、どちらもだめになる」と話す。両方の活性化には、西川材のシンボルが不可欠。「木材搬出に木馬(きうま)と呼ばれるそりを使う林業家がいたり、かつて馬車鉄道の終着駅もあった、馬と縁のある町。木馬は西川材の町・飯能のシンボルにふさわしい」という。
木馬作りには小学生も皮むき作業などで参加する。「飯能は西川材のおかげで開けた町。市街地と山がつながらないわけがないと思った」と井上さん。昨年十月には「間伐・間伐材利用コンクール」(林野庁など後援、応募二百三十件)で、市民団体として唯一、審査員奨励賞に輝いた。
商工会議所を中心に、高さ三メートル、世界最大の木馬作りも進行中だ。実現すればギネスブックに申請する。会員らは「木を循環させることで山が守られる。そういう認識を高めるためにも、今後も西川材の広報部隊として活動したい」と意気盛んだ。
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町からの発信に対し、山の視点で地域づくりと林業を考える団体もある。「東吾野女性林研・ときめ木」=栗原慶子会長(64)。林業家の妻が大部分を占める女性十九人の団体だ。発足は一九八四年。すでに林業だけで生計を立てられる時代ではなく、当時の東吾野森林組合(現在は合併し西川広域森林組合)組合長が「これからは女性の力なくして林業は成り立たない」と、婦人部設立を決めたのが始まりだった。
七七年、千葉県林務課に勤めていた夫知司さん(64)が実家の林業を継ぐため同市長沢地区に移り住んだ栗原さんは「それまで女が山に入るなど考えられなかった。会の発足時は、杉とヒノキの区別がつかない会員がいたほど」と振り返る。今は会員の高齢化で難しくなったが、当初は間伐や枝打ちなど男性と同じ山仕事をこなした。「上流がしっかりしてこその下流の生活。林業が廃れては国が成り立たない」
四年前から、同地区周辺を会場にジャズコンサートを続ける。豊かな森の中、幻想的な雰囲気に包まれるといい、一昨年にはサックス奏者の坂田明さんもボランティア出演した。栗原さんが「都会と地元の協働による、コミュニティーフォレスト(地域の森)づくりの第一歩」と期待する企画だ。運営の中心的存在でもある同会は、間もなく結成二十年。「頼れるお母さん集団」は、今後も山の魅力を開拓し続ける。 (谷村 卓哉)
投稿者: @sushi | 投稿日時: 2004年01月08日 21:40 | 他サイトからのリンク