健全な水循環回復のために求められる流域単位での取組

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三菱総研 資源・循環研究部 主任研究員 林 欣吾

近年、地下水位の低下や湧水の枯渇、河川の平常時流量の減少、各種の廃水からの新たな水質汚濁物質の排出、不浸透面積の拡大による都市型水害の多発など、水循環系の問題が顕著となってきている。これらは、都市部への人口や産業の集中、都市領域の拡大、ライフスタイルの変化(水多消費社会)、農山村部での過疎化や高齢化の進展、近年の気候変化などに起因している。このような水循環系の問題に対応するためには、単に問題の生じている地点のみに着目するだけではなく、水循環の観点から流域を捉え、流域全体を視野に入れた水循環系の健全化への取組が必要である。

水は本来は地球規模で循環するものであるが、「流域単位」で上流から下流までの水の流れに着目して「水循環」を捉えることができる。我が国の水循環は、かなりの程度人為的な影響を受けており、自然のままの水循環系といったものは存在しない。それを前提に、現在各地で「健全な水循環の構築」をテーマにした、流域単位での取組が進められつつある。ここでいう、健全な水循環系とは、「流域を中心とした一連の水の流れの過程において、人間社会の営みと環境の保全に果たす水の機能が、適切なバランスのもとに確保されている状態」ということである。

既に鶴見川、海老川、手賀沼、寝屋川など主に大都市域の一部では、水循環再生構想の策定や、流域の特性を踏まえた水量・水質改善方策の立案・実施などの取組がなされつつある。また、中央省庁レベルでも、本年度に入り、「健全な水循環系構築のための計画づくりに向けて」のガイドラインおよび事例集(関係省庁連絡会議)、河川フレッシュ度マップ(国土交通省河川局)、下水道事業における排出権取引制度の検討結果(国土交通省下水道部)など水循環に関する検討結果や指標の公表がなされている。
今後さらなる流域における健全な水循環系の構築の為には、従来の省庁の所管(河川、水道、下水道、森林、農地など)や都道府県や市町村の行政域を越えて、流域を単位とした多面的、広域的な取組が求められる。また、それらが実効性のあるものとするためには、行政サイドのみだけではなく、流域の関係者(住民、NPO、事業者など)の主体的な参加を含めた形での取組が不可欠である。

投稿者: @sushi | 投稿日時: 2003年11月26日 12:07 | 他サイトからのリンク
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