持続可能な社会づくりと地球環境  〜隣りの企業がやっているあんなことこんなこと〜

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悪化する地球環境の現状に、現在の持続不可能な経済から、持続可能な経済へ移行しなくてはならない、といわれるようになってきました。「持続可能な経済」とはどのような経済でしょうか? 企業経営はどのように変わらなくてはならないのでしょうか? 「持続可能な経済」では、経済活動のあらゆる段階や局面に、“環境”を取り込むことになります。

企業でいえば、工場の煙や排水などの排出物や廃棄物、汚染物質の削減といった、従来の「公害対策・環境部門」だけではなく、社内のあらゆる部門や階層での意思決定に「環境」という側面が入る「環境経営」を行うことになります。

また、「環境」という切り口から、従来とは異なる製造工程や人事評価、調達方法など、新しい社内のしくみも生まれてくるでしょうし、まったく新しい製品やサービスを開発したり、提供したりすることになる場合もあるでしょう。ある日本の経営者は、「環境はイノベーションの宝庫だ」と述べています。

日本では最近、このような「持続可能な経済へ向けての企業のあり方」を模索し、世に問う取り組みがあちこちに芽生えてきました。

企業の環境への取り組みは、大きく二つに分けることができます。

一つは“切り詰める”タイプです。「今つくっているものをもっと少ない資源でできませんか?」「もっと少ないエネルギーでできませんか?」という取り組みです。無駄を取っていくことから、環境への悪影響を減らすと同時に、コスト削減につながる活動です。

ISO14001のしくみや、中小企業向けのISO14001ともいわれる(費用や時間がかからない)環境省の「環境活動評価プログラム」などを活用すると、継続的にシステマチックに、省資源・省エネルギー・廃棄物削減を進めることができます。

私はこれまで、数百の中小企業が環境活動評価プログラムに取り組むお手伝いをしてきましたが、取り組んだ企業のほぼ九割は何らかのコスト削減を報告しています(事業規模や取り組み内容によって、削減金額は数十万〜数千万円とさまざまです)。このコスト削減は主に、原材料費や電力・ガス・ガソリン費、廃棄物処理費などの削減によるものですが、その削減分だけ、地球から取り出す資源の使用量が減り、温暖化を進める二酸化炭素排出量も減り、廃棄物も減っているわけですから、まさに「エコはエコ(地球に優しいことは、財務的にも優しい)」です。

もう一つの環境への取り組みは、し積極的に、“つくり出す”ものです。エコ製品をつくろうとか、エコビジネスを興そうという動きです。

たとえば「今ある製品を置きかえる」という意味でのエコ製品があります。今よりも少ない原料で作る。今と違う原料で作る、今と違うエネルギーで作るなどです。

ペットボトルをリサイクルした再生樹脂で作った文房具や家具など、この分野の商品開発や販売を進めている企業はたくさんあります。その分、新しい石油を掘って作るプラスチックを使わなくてすみます。または、作り方やデザインを変えて、同じものを作るのでも、少ない資源で作れるようにするなどの取り組みもあります。

また、作る過程に注目して、今より少ないエネルギーで作る、もしくは代替エネルギーを使う取り組みを進めている企業もあります。

たとえば、徳島県今治市に「風で織るタオル」を作っている会社があります。今治はタオルの産地ですが、そこにある池内タオルでは、風力でタオルをつくっています。

日本自然エネルギーのグリーン電力証書のしくみを使うことで、工場で使っている電力はすべて風力発電なのです。すると「風で織ったタオル」という呼び方ができます。日本に先んじて、アメリカなどの海外で高く評価されているそうです。
 
また、「モノを機能・サービスで置き換える」取り組みを進めている企業もあります。こうすることで、モノの生産に必要な資源やエネルギーを減らしていくことができます。この分野に関しては特に、日本企業が世界の中でも進んだ取り組みを展開しています。

たとえば、ガスファンヒーター。お客さんは別にファンヒーターそのものがほしいのではなくて、ファンヒーターの作り出してくれる「暖かさ」がほしい。一年の四分の三の季節はじゃまになるファンヒーターというモノではなくて、その「暖かさ」だけ買えたらいい。

富山県富山市の都市ガス会社、日本海ガスでは、ガスレンジやガスファンヒーターなどのガスを使う器具類も売っていますが、二年前から「ファンヒーターではなく、冬のあいだの温かさだけを売る」ことを始めました。

冬のはじめにレンタルして、春になって不要になったら引き取ります。専門家がきちんとメンテナンスして保管するので長持ちするとのこと。開始した年、用意した150台はすぐに予約でいっぱいになりました。お客さんは一冬3000円で、寒い間じゅうファンヒーターが使える。春になったら引き取ってくれるので部屋が狭くならない。会社も何年もレンタルできるので、3000円でも損はしないし、お客様にも喜んでもらえる。

そして、それだけファンヒーターを長持ちして使うことになりますから、作るための資源やエネルギー、使えなくなったストーブというゴミも減ります。

「モノ」ではなく、その「機能」(ファンヒーターなら暖めるという役割)に注目すると、お客様に提供する満足や幸福は同じままで、地球への悪影響(資源を使ったりゴミを出したり)を減らすことができるのです。この「必要なときだけ機能を使ってもらえばいい」という考え方は、新しいビジネスモデルです。

松下電器も、昨年の4月から、工場やオフィスビルを対象に「蛍光灯ではなく照明」を売る「あかり安心サービス」をはじめました。顧客は蛍光灯を買うのではなく、「あかり」という機能だけを利用し、毎月定額のサービス料金を払います。蛍光灯の所有権を顧客に移さず、使用後の蛍光灯は、松下電器が回収して再資源化します。

このサービスによって、顧客は、蛍光灯の初期コストを分散して平準化できるうえ、廃棄費用を含めれば、15〜20%の経費削減が見込めます。また、所有権を持たないので、法が義務づけるマニフェストの管理業務も不要になります。

松下電器では、「ハード(機器)単体のビジネスモデルは、20世紀で終焉した」と、「あかり安心サービス」を先進的モデルと考えています。蛍光灯は、他社との差別化が難しく、価格競争が厳しい商品。モノではなく「あかり」という機能を提供することで顧客を囲い込み、廃棄処理を代行する部分で利益を上げることも考えられます。

大量生産・大量消費・大量廃棄ではない「持続可能な」製品の作り方・売り方を考え、実行する企業も増えています。

コピー機などを製造・販売しているリコーでは、ここ数年で生産工程が大きく変わってきました。見込み生産による大量生産から、オンデマンドによる適量生産への移行です。そして、工場では「工業」のシンボルでもあったベルトコンベアに代わってセル生産方式がとられるようになりました。

営業社員が客先で受注すると、製品とユーザー個々のオプションをネットワークで即時に工場へ送ります。発注情報は、工場内で発注伝票に書き換えられ、生産が始まります。

「これまではお客様が買うか買わないか、まだわからないものを工場は一生懸命作っていましたが、いまはお客様が買うと決まったものを提供する方式です」(紙本副社長)とのこと。

消費者の多様なニーズに対応するために、以前の大量生産から多品種適量生産へ、コンベアライン生産からセル生産への移行です。その結果、無駄な在庫や仕掛かり品もなくなり、コンベア撤去によって消費電力も大きく削減されました。キヤノン、ソニー、NECなどの大企業でも相次いでセル方式を導入し、成果をあげています。

今度は中小企業の取り組みとして、新潟県新発田の菊水酒造をご紹介しましょう。
「ふなぐち」「菊水の辛口」などでご存じの方も多いでしょう。

日本酒の一升びんは各社共通ですから、リユースしやすいしくみになっています。自分のところに戻ってきたびんを洗って、お酒を詰めて、自社のラベルを貼って出荷しています。ところが、最近は、一升びんはあまり使われなくなってきました。よく使われる300mlのびんは、それぞれの酒造メーカーがさまざまな形・色・大きさのびんを使っています。種類が多すぎるので、各メーカーに戻してリユースすることができません。ですから、現在300mlびんの多くは、粉砕してカレットにし、エネルギーを投入していったん溶かし、新しいびんとして再成形する「リサイクル」で処理されています。

菊水酒造では、「それはもったいない!」と、これまでの常識にしばられない新しい発想で、300mlびんのリユースを進めています。まず、どんな形や大きさのびんでも洗浄できる洗浄機を探しました。そして自社のみならず、どのメーカーの300mlびんでも回収して、厳しい衛生管理のもと洗浄し、菊水のラベルを貼って『菊水 Reボトル』として再利用しているのです。

ですから、お店に行けば、同じお酒が入っているけど、色も形もさまざまのびんが並んでいます。見ているだけでも楽しくなります。

やはり中小企業のアベ鳥取堂(鳥取県鳥取市)の取り組みをご紹介しましょう。この会社は、仕出しや「かにめし」駅弁を作って売っています。駅弁は駅の他、物産展、スーパーなども販売しており、全国が商圏です。「かにめし」の容器は、カニ型にするために樹脂製です。

この会社に、二年前にある消費者から「捨てにくいものをなぜ容器に使うのか」と葉書が届きました。駅弁に関して承認を行うJRからも燃やしても無害な容器を、という要望もあり、新商品の「かにめし」開発にあたって、無害で安全な容器づくりにも取り組みました。

いろいろ素材から調査し、電子レンジにも耐えられる素材として、オカラやフスマ、コーヒー粕などを主成分としたPP樹脂で、プラスチック並みの強度があり、焼却してもダイオキシンは発生しない生分解性樹脂の一種を選びました。容器単価アップで、利益率は他の商品より約4%低くなったけど、意義があるから、と阿部社長。

消費者の声を大切に商品づくりに活かされた会社もすてきですが、もうひとつすてきだと思ったのは、新しい「かにめし」を食べた首都圏のある消費者から、「大変美味しかった。最近はワケの分からない添加物が多いのに、かにめしは最低限の添加物で、また容器もかわいく、環境にも配慮してあり、感心しました」と葉書が届いたことです。

消費者が企業を変えていくことができる、そして、消費者の声を聞いて敏感に変われる企業は消費者からの支持と支援を得られることがわかります。


世界では、環境問題などをきっかけに、自社のミッション(存在理由・使命)を定義し直して、新しい会社として生まれ変わる企業が出てきています。たとえば、シェルは数年前に「我が社はもはや石油会社ではない。エネルギー会社である」と宣言し、風力発電やソーラー発電など、石油以外の収益増大をめざして積極的な投資をおこなっています。

滋賀県豊郷町のガソリンスタンド、油藤商事も「全国に数万もガソリンスタンドがある現状のままやっていけるわけがない」と認識し、「自分の会社は、ガソリンも売るけど、ガソリンスタンドは地域のステーションとしての役割を果たせるはず」と自社のミッションを再定義しています。

まずはじめたのは、資源ゴミの分別回収です。ガソリンスタンド内にアルミ缶やスチール缶、ペットボトル、牛乳パックなどの回収ボックスを設置しました。「自治体の資源回収は月に1回だけど、ガソリンを入れに来るついでにいつでも好きなときに持ってきてもらえばいい」(青山社長)。

また、リサイクル品の販売もはじめました。廃棄されたワイパーからブレード(しん)を回収し、選別、洗浄、塗装し、ゴムの部分を取り替えて販売しています。このリサイクルワイパーはとても好評で、月間50〜60本売れているとのこと。

このような「地域のステーション」としての役割を打ち出したこともあり、ガソリンの販売量も順調に伸びています。

また、油藤商事では、廃てんぷら油も回収しています。回収した廃てんぷら油を自社内に設けたプラントでバイオディーゼルに変換し、ガソリンスタンドで販売しています。バイオディーゼルは、硫黄酸化物はゼロ、黒鉛も通常のディーゼル燃料の3分の1以下という、大気にも健康にもやさしい燃料です。今走っているディーゼル車にそのまま使うことができます。

最後に「ちょっと気がついて」「ちょっとやってみた」という取り組みをご紹介しましょう。「環境だ」と大上段にふりかぶらなくても、ちょっと気がつけばできることがたくさんあります。

三年ほどまえに富山市で環境の講演をしたことがあります。そのときに話を聞いてくれた「富山の鱒寿司」高芳の若旦那が、あとになってこんな話をしてくれました。

「枝廣さんの話を聞いて、自分の鱒寿司屋のことを考えてみたんです。ウチも他の鱒寿司屋と同じように、割り箸をつけている。これはいらないんじゃないかな、と。それでウチで使っている割り箸がどこから来ているか、調べてみました。中国産でした。すると、国内の間伐材を使っているわけではないし、中国の森林を伐採して作っている割り箸かも、と思いました。それで、家内と話し合って、割り箸をつけるのをやめることにしました。

親父は最初少し不安に思っていたようだけど。それ以来、何万個も鱒寿司を売っているけど、「割り箸がない」という苦情はひとつも来ていません。やってみると思ったより大したことないんですね」。

企業としては、つけて当然、つけることがサービス、と思っていても、お客さんにとっては、実はそうでもない、ということがけっこうあるのです。

「地球環境のため!」といっても、経済的に持続できない活動は、やはり途中で息切れしてしまいます。だれかの負担が大きくなったり、我慢や無理が続くと「持続可能な社会づくり」のための活動が持続できなくなります。今回ご紹介した企業の取り組みは、「環境に取り組むことで利益が生まれる。コスト削減や新しいビジネスや、生き残りにつながる」という新しいビジネスモデルです。

私は仲間と、日本のこのような環境への取り組みを英語/日本語で、世界や国内に発信するNGO「ジャパン・フォー・サステナビリティ」を立ち上げています。
このウェブ上の情報データベース「インフォーメーション・センター」では、このような企業の新しい取り組みを含め、さまざまな情報を毎月30本アップしています。他の事例や時代の動きにご興味があれば、アクセスしてみて下さい。

http://www.japanfs.org/index_j.html

投稿者: @sushi | 投稿日時: 2003年11月20日 17:45 | 他サイトからのリンク
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