20世紀最大の工学的な達成は何か、と聞かれて、スペースシャトルを挙げる人もいれば、強制収容所や車、テレビやコンピューターを挙げる人もいる。でも、全米工学アカデミーがトップで選んだのは、アメリカの電力網だったという。
電気は産業や生活を一変させた。車は、都市の物理的な形態を決定的に変えたけれど、その都市の風景、特に夜景を一変させたのは電力だ。
ぼくはここ数年、途上国の地方電化の仕事をしている。無電化村にでかけると、自分がいかに電力中毒なのか、実によくわかる。コンピューターも、携帯電話も、洗濯機も冷蔵庫も、まともな医療すら電気なしにはあり得ない。電灯が、夜中の活動時間をどれだけ拡大したことか。
そんな仕事のせいでアンテナが敏感になっているだけかもしれないけれど、この1年は電力関係のおもしろいニュースが多かった。最大の出来事は、全米工学アカデミーの誇る電力網が、アメリカとカナダ東部で実にあっさり落ちたことだろう。たまたま冷夏で救われたが、原発停止に伴う東京の電力危機もあった。いままで当たり前のように享受してきた電力網(とそれを支える制度)への信頼が、ずるずると低下しつつある。
一方で、それと入れ替わるようにとまでは言わないけれど、分散電力分野の新しい展開がいろいろあった。
ホンダが従来よりはるかに低コストの新方式の太陽電池を商業化した。これでかなり急速に(といっても20年くらい先に)再生可能エネルギーが、石油・石炭よりも経済性を持つ見通しもでてきた。従来型の太陽電池も、まだコストダウンが図れそうだ。
パソコン用の燃料電池なんてものが本当に商品化されたのにはのけぞったし、従来の化学式の電池に代わって、密度の高いコンデンサーによる電力蓄積が実用化できそうな気配も出てきた。そして最近では、多孔質のガラスの中に液体を落とし発電する、マイクロマシン版超ミニ水力とも言うべき新方式が(実用にはほど遠いけれど)登場。
新しい分散型の発電方式がどかっと出てきて、かなり現実味を帯びてきた。そしてその多くが日本から出ている。
これらがいますぐ既存の電力網に取って代われるわけじゃない。コストが十分に下がるには、たぶん10年以上かかる。一部は、ものになるかも怪しい。普及しても安定のために相互接続は要るだろうし、都市部では現在の電力供給が当分は優位なはず。それでも電力網のあり方が大きく変わるのは間違いない。
地方電化の話も一変するだろう(つまりいまぼくがやっている各種計算はかなり無駄になるわけだ。やれやれ)。
都市の姿も変わる。携帯電話くらい、人々の生活を変えるんじゃないか。制度も、法律も変わる(太陽光発電が一般化したとき、日照権の意義がどう変わるか考えてごらん)。21世紀の最大の工学的達成は、案外本格的な分散型電力網の完成なんてことになるかもしれないぞ。歴史は終わったとか、日本はもう衰退の一途だとか、まことしやかに語る人がいるけれど、日本が果たす役割も、まだまだありそうじゃないか。
投稿者: @sushi | 投稿日時: 2003年11月15日 22:20 | 他サイトからのリンクPlaying texas holdem at http://texas-holdem-000.net right now is a great idea, i thing!
投稿者: texas holdem | 投稿日時: 2004年11月25日 21:14